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統合失調症の患者さんと喫煙 (2)

統合失調症の患者さんと喫煙(ニコチン依存)の関係は非常に複雑です。
統合失調症の生物学的な基盤との関係から,病棟管理上の問題に至るまで,取り上げられ方もさまざまです。

思いつくままに挙げるならば――

1) 統合失調症患者さんの喫煙率は高い(70~80%)

2) 喫煙率が高い理由としては,精神症状によるストレスを軽減しようとするため,という説もあれば,陰性症状や認知機能障害によって喫煙リスクに対する理解力が低下するため,といった説もある。

3) 一方で,ドーパミン受容体やアセチルコリン受容体の異常といった生物学的基盤が関与しているかもしれない。すなわち,統合失調症であること自体がニコチン依存のリスク要因であるのかもしれないという説もある。

4) ニコチンは薬物の分解に関係する肝臓の酵素を誘導して薬の分解・排出を促進させる作用があるので,喫煙によって薬の血中濃度が低下し,薬効が軽減してしまうかもしれない。

5) 一方で副作用も軽減するので,不快な副作用を無意識のうちに和らげる目的で喫煙するのかもしれない。

6) 喫煙とは関係なく,統合失調症であることは肥満や高脂血症,糖尿病のリスク要因である。これに喫煙が加わることで心血管系の疾患の発症リスクが相乗的に高まるかもしれない。

7) そして,入院や保護室への隔離などで強制的に禁煙を迫られた場合,ニコチンの禁断症状が出現し,本来の精神症状との区別が難しいことがある。

などといった要素が喫煙にはあります。

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統合失調症の患者さんと喫煙 (3)
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コメント (2)

kazukazu:

詳しい記事のTBありがとうございます。
タバコの問題はほんとうにむずかしいのですね。
息子の場合も、不安が強くなると頻繁に吸うし、
(精神安定化作用も多少あるのか)
しかし、吸っているうちに、
いつのまにかニコチン依存になっている。
そして、薬の副作用の軽減と同時に、
薬の効果も薄めてしまうという、
悪循環になります。
家では問題なかったことが、
入院するとタバコの制限があり、担当医も
模索しています。
一方で、不安・幻聴からくる不穏も残っているようで、
他の患者への影響もあり、
保護室からいったんは出たものの、
また、戻ってしまいました。
明日、医師に事情を聞きにいきます。
また、ブログ上で報告します。

統合失調症と喫煙について初めて知ったことたくさんありました。
私もタバコやめないとなぁ~。
家族で連鎖的に統合失調症になる場合ってよくあることなんですか?

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2007年07月10日 18:21に投稿されたエントリーのページです。

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