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双極性障害(躁うつ病)の診断と治療 ―典型的な治療失敗例(疑)を通じて― (2)

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前置きの付け足しから始めますが,S医師が私にこの記事の再録を強く勧めた理由のひとつは彼自身が感じているフラストレーションであるとのことです。

彼は現在は臨床を離れて関西某所で研究職に就いているのですが,週に1回,神戸市内の病院で外来のアルバイトをしています。
他医から引き継いだり,他院から紹介された患者さん診察しているわけですが,特に双極性障害(躁うつ病)の患者さんについては治療のレベルが低く,処方に至っては百害あって一利なしとも言えるものばかりで,医療の態をなしていない,というのが関西で臨床を始めたS医師の見解です。

後に述べますが,双極性障害(躁うつ病)の診断・治療への精神科医の意識の低さは関西に限った問題ではありません。ただ,「マンガ お手軽躁うつ病講座High&Low」「マンガ境界性人格障害&躁うつ病REMIX 日々奮闘している方々へ。マイペースで行こう!」の著者のたなかみる氏は関西の方で,治療を受けているのも関西の病院なんですよね(病院名入りで主治医が実名で後書きを寄せています)。

まあ,そのあたりにバイアスがあるかもしれないことを念頭に,以降の記事をお読み進みいただけますと幸いです。


いろいろな意味で興味深く,勉強になる……というか,考えさせられる本を読んだので,レビューかたがた,双極性障害(躁うつ病)の診断と治療について考えてみたいと思います。

読んだ本というのは「マンガ お手軽躁うつ病講座High&Low」と,その続編である「マンガ境界性人格障害&躁うつ病REMIX 日々奮闘している方々へ。マイペースで行こう!」
発行元は医学書の専門出版社である星和書店で,作者はたなか みる氏(女性)。

      

イラストレーターであるたなか氏ご自身が双極性障害(躁うつ病)を患われていて,ご自分の闘病生活を漫画として描かれています。
かなりお辛かったでしょうし,今現在も病状は必ずしも落ち着かれてはいないようですが,ポップな絵柄で,あまり悲壮感が前面に出ないように努められていて,漫画としても高いレベルのものになっています。

ただ,医学的にはどうかな,という点が,特に「境界性人格障害&躁うつ病REMIX」を中心にいくつか見受けられます。
ちなみにそれはたなか氏の疾患理解や作画技術上の問題ではなく,たなか氏の主治医の知識や技術の問題であるように思われます。

もちろん僕はたなか氏を診察したわけではありませんから,たなか氏を直接診察し,治療を行っている医師に対して何かを言える立場では本来はありません。

しかし同人誌などではなく,不特定多数の読者が購読しうる出版形態をとっていることから,批評の対象とされること自体は、たなか氏も出版社側も織り込み済みのはずであると理解しています。

また,プロモーションの仕方からして,この2冊は明らかに患者さんやそのご家族を主な読者層として想定しており,標準的な診断や治療と,本の内容との乖離を指摘することも無益ではないと判断しました。

たなか氏やその主治医の診断・治療に直接的に異論を唱えることは僕の本意ではありません。
あくまで出版物としてのこの2冊に描かれた躁うつ病と境界性人格障害に関する記載をとっかかりに,これらの疾患をとりまく問題点を指摘していくというスタンスで,以下に小論を述べていこうと思います。

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コメント (1)

躁鬱病の記事、たのしみにしています。
できたら、統合失調感情障害の記事も希望です^^;

最近は躁鬱病が医療業界でもトピックになっていると書かれていましたが、どうしてですか?

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2008年08月03日 22:37に投稿されたエントリーのページです。

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